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最高裁判所第二小法廷 昭和31年(オ)180号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を大阪高等裁判所に差し戻す。

理由

上告代理人北川正夫同信正義雄の上告理由について。

上告組合は原審において本件手形振出しの原因関係をなす保証行為は性質上、上告組合の事業目的の範囲外の行為であつて無効であるから、かかる無効の行為に基いて振出された本件手形については上告組合は、その直接の相手方たる被上告会社に対し手形支払の義務はない旨抗弁した事は記録上明らかである。

しかるに原審は「法人の行為が、その目的遂行に必要であるかどうかはこと手形の場合にあつては、その手形行為だけを対象とすべく、その原因行為は対象から除くべきものといわなければならない」として本件手形振出の原因行為たる保証が上告組合の目的の範囲外であるとの上告人の主張に対しては何等の判断も与えていないのである。しかしながら本件の如く手形振出しの直接の相手方たる被上告会社との関係において、手形の振出しが原因を欠くかどうかは、たとえ、その原因を欠くという理由が本件におけるが如く原因行為が振出人たる組合の目的の範囲外であるというにある場合であつてもこれを判断するの要があるのであつて若し目的の範囲外であるとするならば振出の直接の当事者間に於いては手形はその原因関係を欠くが故に振出人たる上告組合に手形支払の義務はないことになるのであつて、原判決が手形の場合に、その原因関係が目的の範囲外なりや否は常に判断の対象から除外すべきものと判示したことはあやまりであるといわねばならない。(本件に於ける原因関係たる保証行為が上告組合の目的の範囲外なりや否やも又原判示のごとく客観的、抽象的に判断するを要し且つこれをもつて足るものであるけれども)原判決はこの点において違法であり、論旨は理由があるといわなければならない。

よつてその余の論旨に対する判断を省略し民訴四〇七条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

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